仙人講座/第22期 (平成24年度)

■第1回講座  平成24年6月13日 遊学館

第1部 
「ロンドン五輪への期待とその裏舞台」
スポーツジャーナリスト 二宮 清純氏

 「ロンドン五輪への期待とその裏舞台」と題し講演を行った二宮清純氏は、スポーツジャーナリストとして国内外で取材活動を展開し、執筆や講演の他、テレビでもご活躍中です。

 ロンドンオリンピックが間近に迫り、JOC(日本オリンピック委員会)は金メダル総数を世界のベスト5以内という目標を立てております。目標達成するためには何が大事か、それは準備力だと思います。「準備力なくして勝利なし」ということです。
 前回のサッカー南アフリカワールドカップで日本は決勝トーナメントへ進出を果しました。この快挙の原因として世界32ヶ国で日本がトップだった数値があります。1位日本59%、2位スロベニア52%、3位オランダ50%、これはシュートがゴールを捉える確率、オンターゲット率です。日本のシュートは実は世界で一番上手いのです。FIFA(国際サッカー連盟)で使用したボールを国内リーグで一番先に採用し、いち早く慣れて準備したからです。また、北京オリンピック女子ソフトボールの斉藤監督は、球場の眩し過ぎる照明に気付いて、日本のサングラスメーカーにボールの輪郭が把握できるサングラスを注文しました。サングラスの着用を徹底し、決勝トーナメント以降エラーは1つもなく、ピッチャー上野を鉄壁の守りで支えました。これが金メダルの誕生に繋がりました。つまり、結果が出ているところは準備が上手くいったところで、運をつかめる人は、準備ができているということです。

 勝負に対して人間は、「迷う人」と「悩む人」の2通りに分かれます。だいたい負けるのは迷う人です。悩む人は他人の話をちゃんと聞きます、リサーチします、しかし、ブレない。決断の主体が自分です。勝てるリーダーとは常に最悪の状況を想定し、切るべき最善のカードを1枚握っていて、危機に際してはためらわずに切ることができる人なのです。

 講演の中では、オリンピック選手の興味深いエピソードを多く語っていただき、最後に「良きリーダーたらんとする者は、先ずもって良き背中を持ちなさい。」と、イタリアのサッカー教本で感動した言葉をご紹介され、講演を締めくくられました。

第2部 
「仙人講座ミニコンサート」
山形交響楽団金管五重奏

 山形交響楽団金管五重奏の生演奏をお聴きしました。クラシックの名曲から、映画音楽、山形の民謡まで、親しみ深く幅広いジャンルの曲を演奏していただきました。金管楽器の華やかな音色と豊かなハーモニーに心が和む優雅なひとときとなりました。

第2回講座  平成24年7月11日(水) 遊学館

第1部
「病まざる 老けざる ホンマの医学」
内科医・作家 おおたわ 史絵さん

 「病まざる 老けざる ホンマの医学」と題し講演を行ったおおたわ史絵氏は、内科医として地域医療に努めるかたわら、講演や執筆、テレビなどでご活躍中です。

 身体でどこが痛いかと聞かれたら「腰が痛い」という人が、実はすごく多いです。日本人の男も女も全部ひっくるめて、若い人から歳を取った人まで、一番多いのは腰が痛いということ。腰のためには、仰向けで寝ることが一番良く、なおかつ膝の下に毛布みたいなもの、枕みたいなものを入れると腰の負担がもっと軽くなると言われています。

 先々心配なのは認知症ですが、認知症になりにくいと判っている意外な食べ物があります。それは豚肉です。ビタミンB群の分布が良く、量としては週に数回50g程度の摂取で大丈夫です。あとは買い物、特に男で買い物が好きな老人は認知症にならないことが判っています。もっと良いのはインターネットで興味のあることを調べたりすること、それが予防に役立つことも判っています。

 今より少しだけでも幸せと思えるための方法はないか。人間には幸せを感じるホルモンが脳の中に何種類もあります。ドキドキする興奮系の幸せホルモンのアドレナリン、穏やかな幸せホルモンのオキシトシン。幸せホルモンの中で特に知っていて欲しいホルモンにセロトニンがあります。このセロトニンの出し方はいくつもあって、太陽の光を浴びることや、リズムに乗った運動・体操をすること。大豆・卵・牛乳・納豆を毎日ちょっとずつ食べるのも良いです。ただ取り過ぎるとコレステロールが高くなるから気をつけてください。

 最後に「とっておきのセロトニンの出し方、それは恋をすることです。誰かを好きと思ったり、応援したいなと思ったりする気持ちが、人生をもっと幸せなものにしてくれますから、面倒なことが起きない範囲で他人を好きになってください。」とユーモアを交えて、講演を締めくくられました。

第2部 
「こばくさいごどをねっづぐ。~なまらナイトの舞台裏~」
NHK山形放送局チーフアナウンサー 柴田 徹氏
【見る】

 「こばくさいごどをねっづぐ。」と題し講演を行った柴田徹氏は、山形市出身のNHKアナウンサーで、「今夜はまならナイト」という人気番組を企画し、自らも『親方』としてご出演されるなどご活躍中です。

 「こばくさいごどをねっづぐ」共通語でいうと「ばかなことを一生懸命に」。感じ悪いですね。山形で生まれ育って高校まで過ごし、大学は仙台、その後NHKに就職しました。青森-仙台-神戸-名古屋-東京、次はニューヨークかと思っていたら故郷の山形へ。「なまらナイト」をやるぞという気持ちを持ったのは、自分の生まれ育った山形に対する思いから。高校時代、山形の土地柄や大人に対して悪態をついていた自分が山形に戻ってきて、何がさんなねんじゃないか。山形の若い人たちへ山形ってどんな街か、良いところ悪いところを思い切って喋ろうというところからスタートしました。河北町で「なまらナイトカーニバル」を放送した1週間後に大震災があって、こんなことしていいんだべか、放送人として何すっといいんだべと考えました。しかし震災の時、ほとんどの人はラジオを聞いていて、親方の声が聞こえて安心できたというメールを何通ももらいました。「こばくさいごどをねっづぐやる」っていう一生懸命さは誰かの気持ちを動かすことができると、その時初めて、自分が気付かなかった「なまらナイト」の持っている意味を感じました。こばくさいことは良いんです。一生懸命やってみっどモノが違って見えてくる。

 言葉には感情・意思を伝える力があります。ましてや方言は長い歴史に培われて受け渡されてきた言葉。どうしてもこれだけは分かって欲しいということがある時には、方言が出るような空気みたいなものは大事にしていただきたい。

 「今夜はまならナイト」のメイキング映像も交え、親方ならではのテンポのよいユーモアたっぷりの講演に、会場は終始笑いにつつまれ、楽しいひとときとなりました。

■第3回講座  平成24年8月30日(木) 遊学館

「にしゃんた東方見聞録」
羽衣国際大学准教授  にしゃんた氏

 「にしゃんた東方見聞録」と題し講演を行ったにしゃんた氏は、スリランカのご出身で、羽衣国際大学で教鞭をとるかたわら、テレビやラジオなどでもご活躍中です。

 私の故郷スリランカは、インドの先にある島です。文化というのは国によって変わってくる。例えば日本語で「はい、そうです。」という言葉。この時、頭を縦に振る。スリランカでは頭を8の字に振るんです。日本の中にも違いはあります。男性・女性によっても、地域によっても、年齢によっても。皆さんの顔が1つとして同じではないように違いがあるんだと気付くことは凄く大切なことです。違いが何のためにあるのか。まず1つ、楽しむためです。もう1つ、学ぶためです。学ぶきっかけがそこにある。気付いて違いを取り入れて、新しい自分をつくっていくために違いがあるんです。違いを受け入れ、自分が変化する。我々の子孫に対してそういった発想を伝授していくことは全ての問題を解消する糸口になってきます。「共生」という言葉は良いですね。ただ、共生には、同化したりすみわけたりするのも入ってくる。共に楽しむ、共に笑い合える関係「共笑(ともえ)」、それこそが大事です。完成することなくいつまでも新しい自分を絶えずつくっていきましょう。実は違いを受け入れて変わることに日本人ほど優れた人たちはいません。例えば七福神、純粋な日本の神様は恵比寿さまだけで他はインドか中国の神様です。それを豪快に日本の神様としてまとめている。共笑を妨げる3つの壁があります。心の壁、常識の壁、言葉の壁です。コミュニケーションをたくさんとりましょう。豊かな心をつくってくれますし、新しい常識をつくってくれますし、絶えず続けていくことは共笑な豊かな人生に繋がっていきます。

 最後に、命を大切にしてくださいね、長生きしてくださいね、という意味の母国語の挨拶「アーイーボーワン」で呼びかけられて講演を締めくくられました。

■第4回講座  平成24年9月27日(木) 遊学館

「不測に立ちて無有(むう)に遊ぶ」
作家・僧侶 玄侑 宗久氏

 「不測に立ちて無有に遊ぶ」と題し講演を行った玄侑宗久氏は、臨済宗福聚寺住職を務められるかたわら、執筆や講演などでご活躍中です。

 仙人という考え方は老子・荘子からきています。二人の老荘思想が道教という宗教を生み出して、道教の人々が理想として掲げるのが仙人になるということです。諸子百家と呼ばれる人たちの中で唯一、老子・荘子は国家を認めず、村は小さい方が良い、1つの地域の人たちが仲良く暮らすと言っている。それに対して孔子は国家を認め、隣の人と仲良く目上の者を立てながら礼儀を尽くして知恵深く信頼を築けるように暮らそうと言っています。また、過去を悔やんでも仕方がないが、将来はまだ決まってないから目標を掲げて努力しようと。しかし、荘子が反論します。将来に期待してはいけない。もちろん過去も悔やんでもしょうがないし、追い駆けたってしょうがない。過去は忘れてください、未来は考えないでくださいと言っています。これが老荘思想の神髄です。

 老荘思想を別の表現で言うと「不測に立ちて無有に遊ぶ」となる。不測に立つということは予測しないということ。孔子は政治に関わろうとするので、先のことを知らないのは許されない、目標や計画を必要としている。でも私の暮らしは計画がありません。一切先の予想はしない、起こったことに対応するだけです。過去を振り向かない、過去を悔やまない、未来を憂えない。これの一番理想的な形は鏡です。常に今しか映さず、ありのままが映ります。

 仙人は決して長生きを目指しているわけでもないのに、長生きをしてしまいます。長生きの秘訣を江戸時代の天海僧正が徳川家康に教えています。1正直 2素食(主食を中心に食べる) 3日湯(風呂に入る、お湯を飲む) 4陀羅尼(お経を暗記し唱える) 5時々下風(おならをする) この5つです。

 最後に「荘子は寿命を天然と呼んでいます。鶴は千年、亀は万年、人は天然を生きる。天からいただいた寿命と考えるしかない。いつお呼びが来るか分からない。皆さん無事のようですので無事お帰りいただきたいと思います。」と笑いを誘って講演を締めくくられました。

■第5回講座  平成24年10月11日(木) 遊学館

「食と笑顔と心の持ち方~日本型食生活の知恵袋~」
神谷料理研究所代表 神谷 信將氏

 「食と笑顔と心の持ち方」と題し講演を行った神谷信將氏は、全国で料理教室や接遇マナー教室、講演活動をされるなどご活躍中です。

 食べ物って食べる時にワクワクするのが良いですね、いろんなものを食べると良いです。これからはきのこの時期ですが、きのこ類は肉の脂肪をうまくコントロールします。鰹節にはいろんな成分があり、ドーパミンに代わる成分があります。やる気とか創造力がいっぱい湧いてくるチロシンです。ダントツで多く入っているのは竹の子で穂先の方に多いんです。蕪は葉っぱの方が緑素野菜、下の方が淡色野菜で1つのものに2つある。整腸作用そしてお肌に良い。新鮮だったら絶対に蕪の皮はむかないでください。

 心のあり方として、一番を目指すことは大事です。「一番」を持っている人は強い、そこに人は集まってくる。一番を目指しましょう。現状維持ではだめです、去年より頑張ろうという意欲がないと。一番を目指して日本一になった人が桃太郎さん。犬・猿・雉、犬は勇気です。勇気を持って行動すると信用・信頼が後ろから付いて来る。猿は知恵です。知恵を重ねると教養になります。教養のある人に必ず人が集まります。自分のやることは一生懸命やっておきましょう。人生に遅いなんてことはないです。一芸8年、商売10年、桃栗3年柿8年、汗と涙で20年、それでもだめなら30年と言います。何か1つのことをコツコツやっていると絶対自分のものになります。

 最後に、哲学者森信三先生の言葉を引用され「人生に於いて必要な人には必ず、一瞬早からず一瞬遅からずちょうどに会える。皆さんにもちょうどにお会いできてありがとうございました。」と終始笑いの絶えない講演を締めくくられました。

■第6回講座  平成24年11月7日(水) 遊学館

「ひらめきは『魔法のちから』」
女流棋士 矢内 理絵子さん

 「ひらめきは『魔法のちから』」と題し講演を行った矢内理絵子氏は、女流プロ棋士としてタイトルを多数獲得され、将棋番組などでもご活躍中です。

 今将棋界で話題になっているのが、人間対コンピューターの戦いです。将棋は、序盤戦-中盤戦-終盤戦と大きく3つに分けられます。序盤戦は過去のデータや定石といわれる部分、終盤戦はどっちが先に王様を詰ますかという計算能力で、共にコンピューターが強い。中盤戦は力の捻り合いですから、人間の方は人間独特の能力である「ひらめき」「直感力」で、勝負を有利に持っていきたいと考えるようです。この「ひらめき」「直感力」を含め6つの力を皆さんにご紹介します。

 「集中力」は目的意識を持って大きな目標と小さな目標を設定することによって、持続して養われていきます。「創造力」は過去の実践データを研究し、情報を整理記憶していくと頭の中の引出しが増え、変化があっても対応する力が培われていきます。「ひらめき」や「直感力」というものは、将棋の中では大きな力を発揮して助けてくれます。将棋界では、直感は7割正しいと言われています。物事に対し必死に努力して蓄積した時間や自分自身を信じることで、より正しい直感が発揮されます。「決断力」は開き直るとか覚悟をするイメージです。決断した結果ではなく、決断したことに対しての努力や過程が大切です。「忍耐力」は結果を急いで求めず、相手の言っていることを聞いてあげられる余裕を持つことによって養われていきます。将棋では勝負後、負けた原因や良かった手を回想し合う風習があり、それを精査し練習試合で試します。「失敗に対応する力」はその繰り返しにより脳に刻み込まれて磨かれていきます。このようにして、直感やひらめきもより正しいものに厳選されていくのです。

 最後に「その時その時の局面を見誤らないように状況をよく考えて、今後の物事にこの6つの力を発揮していただけたらと思います。また将棋界にも興味を持っていただけたらと思います。」と会場に呼びかけ、爽やかに講演を締めくくられました。

■第7回講座  平成24年12月6日(木) 遊学館

林家たい平独演会 
林家たい平氏(落語)林家あずみ氏(三味線漫談)

 林家たい平氏の落語と林家あずみ氏の三味線漫談を生で楽しみました。あずみ氏の爽やかな三味線漫談に心癒され、たい平氏のテンポのよい「お見立て」そして年末ならではの人情話「芝浜」に大いに泣き笑い、心も体も元気になる素晴らしいひとときとなりました。