仙人講座/第12期 (平成14年度)

第1回講座  平成14年7月24日(火) 遊学館

基調講演
「明日のこころ」改め「こころの年金」
 俳優 小沢 昭一さん

 テレビやラジオ、ことに毎日夕方になるとラジオから流れて来るあのメロディーと「あしたのこころだー」の決めぜりふといえばこの方、小沢昭一さん。壇にお着きになられるや、用意された水をグラスに注ぎかかげて「本日お集まりの方だけの健康を祝しまして乾杯」とさっそく“小沢昭一的世界”ヘのエピローグ。

 まずは平易に健康であることのありがたさ、人間元気が一番だと話を淡々と進められる。何か仕掛けがあるのが小沢さんの話の運び「病気になったらおしまいでございます。どうぞ一つ、健康は健康なときに充分ご留意いただきたいなというふうに思います。

 以上を持ちまして講演をおわらせていただきまして、引続き演芸会に切り替えさせていただきたいなというような気分でございます。」といっきに“小沢昭一的世界”に引き込んでゆくのです。

 健康法へと話は進んで行きます。私の健康法は「ぬるいお湯にゆっくり入るということを旨としております。お医者様に伺いましたら、熱い湯にパッと入ってパッと出るのは良くないんだよと言われましたので、自信をもって、ぬるい湯に90分ぐらい入っている」ことだそうです。その長い90分の間にすることにも独特なことがあるようで、まずは「風呂のフタに小鉢を並べて食事をする」んだそうです。でもフタをひっくり返して「大量の雑炊を作った」ことで、後は謹んでおられるとか。新聞、雑誌、週刊誌は必ず湯船につかりながらだそうで、新聞の読み方も「私は下から読んでゆき読みおわった部分はお湯の中に入っていく」のだそうです。

 新聞を下から読んでゆけば一番最初に読むのが死亡欄になってしまうのだそうで、欄を見る時はどなたがお亡くなりになられたのかは余り関心はなく、亡くなられたお年と病名は毎日必ず目を通し、特に、自分と同い年の人の訃報に接しますと、ここだけの話でございますがネ、秘かに、心の中でですよ、「また一人やっつけたぞ」というふうに思うのだそうで、「もう50、60過ぎた頃から人間も生き残りのトーナメントというものが繰り広げられる」というのです。

 風呂の中での新聞のお題でもう一つ。全然見ない欄が株式の欄で、“白紙同然”のものを風呂の壁に貼ってマジックを用意しておき、それにその日の自分の行動を日記替わりにして一日の感想思いを書くが「こぼしとか、人と会った時の腹立ったこととか、人の悪口を書くこと」が多くなるそうです。その書いたものを大きな声で朗らかに節をつけて歌いストレスを発散させるのが小沢さんの独特の健康法?だと、ただし「皆さんにお奨めできることではなかろうかとも思うんですがネ。」だそうです。

 俳優業を続けてゆくうえで「もっとも大事な、これが無ければどうしようもないというのが何かといいますと記憶力でございます。俳優は脚本台本のせりふを覚えてなんぼという、そういう商売でございます。覚えなけりゃどうする事もできないですよ」と記憶力の衰えの自覚を語り、アルツハイマー病の母を看護して、ぼけについて知り得たことを、浜松の医療センターの長年の研究の成果として披露して下さいました。一つ「音楽と無縁の人ぼけやすい。人間には音楽は必要なんですね、子守歌、音楽の力で心がニュートラルになる。浪花節でも、お経でもいいそうです。リズムとメロディーのあるものなら良いそうです。鼻歌なんかもいいそうです」二つ「絵画、絵と無縁の人ぼけやすい。鑑賞するだけでもいいんだそうで、一日のうちに絵に心をふっと奪われる時間があるかないかが大事なんですって、なる程なと思いました。そういう癖が毎日自然に身に付いている方ぼけないそうです」三つ目は「俳句短歌川柳そういうものと無縁の方ぼけやすい。新聞に毎日俳句や川柳は2、3首載っているものですが、忙しい忙しいと言ってそういうものに目を持っていかない人ぼけやすいそうでございます」ほかにも「クロスワードパズルなんかも良いそうですよ。そんなもんに感心がない面倒くさいという人はぼけに向かってまっしぐら」「スポーツに無縁の人もぼけ候補生」と話つづり、「一文にもならない事をやるのがいいらしいですよ。一文にでもなる事は良くないらしいですよ。つまり、趣味、ホビーがいい」と軽妙な語り口とエピソードを交えて語ってくれました。

 また、大きな仕事をなしたが趣味を持たなかった友人が絵を趣味にしたことを話題にして、年をとってからの趣味に熱中しすぎるのは良くないが、「何かお楽しみを、何でもいいんです。それやってるとなんか忘れちゃう、いやなことも何もかも忘れちゃう、それやってると夢中になっちゃう、それやってるとなんかやってる間中は嬉しい、もっと言えば生甲斐のようなものも感じられるというようなもの」をやることがぼけない秘訣だとやはり「浜松の医療センターの長年の研究」として披露なさいました。

 「人間にとって大切なものって何でしょうね。私ね、ぶっちゃけた話、人間にとって大切なもの金と心、この二つだと思っています。」そして話は年金制度に及び「金と心、金銭的な充実安定と同時に、心、精神的な安定両方が相俟って充実した人生を送ることが出来ると思うのです」と心の安定のための「こころの年金」を提案され、なにか少しずつ少しずつ心の年金を納めていく。そして年取ってから、夢中になれる自分の身丈に会ったものを見つけて準備しておくことを勧められました。そして「話が終ってから演題が決まるという質でございますので、「こころの年金」と演題を変えさせていただきたい」と演題変更届?を提出なされたのです。

 ご自身は年金も心の年金も納めていないと独白されて、これから少しでも心の年金を納めようと、「一文にもならない」こととして思い当たるのがハーモニカだとして、その出会いなどを話して下さいました。そして突然ポケットからハーモニカをとりだして愛染かつらの主題歌「旅の夜風」を演奏して下さいました。
 最後は「本日はわたくしのぼけ防止にご協力下さいまして、ありがとうございました」と締めくくり、「小沢昭一の世界」を楽しませていただいた講演でした。

実践講座
「体のリズム」
 山形短期大学助教授 江口 千鶴子さん

 当講座ではもうおなじみの「秋元千鶴子先生」改め「江口千鶴子先生」。その改名のきっかけ、6カ月前の結婚の報告をちょっと照れながらすると、会場からは暖かい拍手の祝福がわき起きました。また、自己紹介も小沢さんのラジオ番組で日本にもジョイナーみたいな選手がいると当時の日本ではよく目立った、陸上ハードル選手時代のユニホーム姿に触れられたことを楽しく語り、その時の姿を“コマネチ”の身振りを入れて皆さんの笑顔を誘いました。

 当日は真夏日でしたが、会場は冷房がよく効いて寒いほど、そこで先生は、「冬だけではないんだよ。クーラーが効いて、一時間もじっとしていると血管がキュッと縮み上がって血の巡りが悪くなる。血の巡りが悪くなると酸欠状態になり、あくびが出る。」と切り出し、「座っていただけでは健康はやってこない。自分からはじめないとやって来ない」と、自発的に体を動かすことをすすめる。
 「筋肉細胞残高」と云う言葉で体の健康状態をはかる一つの目安を示し、その残高を減らさないように、また増やすようにするためには「今日からどうするかが問題なの」とさっそく手軽にできる運動の指導をはじめられました。

 まずは全身筋肉で出来ていること、顔も筋肉、頭も筋肉で出来ていると顔頭の筋肉収縮させて“百面相”。盛んに笑わせて心をリラックス、準備運動させることからでした。

 「10回以上筋肉を曲げ延ばしをすることを運動という」と運動効果の話をして、両手を前に出して「グゥ、パー。グゥ、パー。」の運動。最初はゆっくりその内に「チョキ」もはいって早くなり、そこで筋肉疲労の解説。疲労物質の乳酸が出るためで、休むと回復するが、その回復するはやさが年とともに遅くなるから過度なことはしないで、「適度に毎日コツコツと継続することが力になる」。

 そして今度は指先の運動。「親指を曲げて1、親指と人指し指を付けて2、親指と中指で3、親指と薬指が4、親指と小指を付けたのが5」と数字の意味を伝えて「123、245、3124245」とリズミカルに掛け声をかける。混乱しながら指を動かす生徒さんさん達に、「脳細胞」と「筋肉細胞」の関係を話す。指を正しく動かすために脳細胞も活発に働き、反応速度も速くなるよと、動かすことの大切さを。

 次は肩です、肩の真ん中を力強く、叩くほうの肘をしっかり伸ばして叩くように。「肩凝り体操」は叩く方の腕も運動になリ、血液の流れをさらに良くすること、肘の上がらない人はもう一方の手で押し上げて叩けば運動するところも増えて一石二鳥ですよと。
 引力に逆らう運動として「足を上げる」運動。床から10センチも上げれば充分と無理をしないでと言いながらも「一日10回ギュッ、ギュッ、ギュー」と掛け声をかけます。この頃になるとうっすらと汗ばむ人も出はじめ、運動の効果がよく分かります。
 運動する部分が下がって、足首、アキレス腱を強化する「かかとを上げる」運動へ。足首がキュッとしまるだけでなくこれは第二の心臓と言われるふくら脛の運動にもなると説明。かかとを上げつま先立つことは歩く時にも取り入れて欲しいとのことです。

 最後に「自分のやれることをコツコツ頑張れば、いろんな細胞が増えていきます。元気になります。体、抵抗力がついてきます。そうすると風邪引かない、夜寝れる、みんな健康につながっていきます。そしてくよくよしない。明日は明日の風が吹くと思い、毎日を、元気で明るく過ごしていただきたいなと思って、先生今日頑張りました。いかがです簡単ですね。」と締めくくられました。

第2回講座  平成14年8月23日(金) 遊学館

基調講演
「若者言葉の心理」
 新語アナリスト 亀井 肇さん

 基調講演は新語アナリストとして若者言葉を研究する亀井肇氏。『若者言葉の心理』と題して、いま若者の間で話されている言葉について話して下さいました。
 また、大人の言葉が、社会の慣習習慣など、いわゆる一般常識、社会一般に通用する「社会規範性の言葉」であるのに対して、子ども達が使っている言葉は、友達の間だけで通用する、他の人が聞いても理解できないような「グループ内存性の言葉」であると解明され、「むかつく」、「きれる」、「はまる」等の用例を解説して下さいました。    

 大人同士の話で使えば喧嘩を売るような言葉でも、子ども達の間ではゆるやかな意味合いで話されていたりと、理解ししっかりとコミュニケーションをもつのは難しいが、「四音省略」された言葉(キムタク、パソコン等)が社会的に認知されている言葉から理解していくのも一つの方法として紹介された。

亀井 肇氏

実践講座
「温泉の効用と利用の仕方」
山形県温泉療法研究会 片桐 進さん

 つづいての実践講座は、肘折温泉療養相談所立上げにも尽力されたこともあり、温泉療養保養に関してのエキスパート、山形県温泉療法研究会の片桐進氏の『温泉の効用と利用の仕方』です。

 湯治客の療養相談をするの中で、調査された温泉保養効果の結果をも元に、温泉生活の効果を説かれました。温泉保養は入浴の効果だけではなく、自然環境からの恵み、温泉地文化との交わり(宿の食事など)、生活リズムの規律など多くの効果が重なり合って心と体を癒してくれると、入浴のこころえも具体的にお話されて湯治をすすめられました。

片桐 進氏

第3回講座  平成14年9月20日(金) 遊学館

基調講演
「いきいき健康づくり」~最上紅花を植えましょう~
 公益文科大学教授 平松 緑さん

 「いきいき健康づくり」―最上紅花を植えましょう―の題で、酒田市に開校された公益文科大学の教授平松緑氏の基調講演からはじまりました。

 「ボケは治すことはできないが、おさえ、予防することができる」と多くの学術的研究成果、その資料を示されて話は進められました。ボケなど老化現象と言われるものには活性酸素が大きく関わっている。その予防のためには「体内の活性酸素を減らす食品、飲み物をすすめます」ということです。それも「一種類でなく二種類以上」を摂ることが効果を高めるとのことです。フリーラジカル、ポリフェノール基などふだん耳にしない言葉に戸惑いはありましたが、学術的な話を聴くことも脳活性につながるのではないのでしょうか。 

平松 緑氏

実践講座
「ヨガと足法」
 ヨガインストラクター 橋谷 田和子さん

 つづいては、緊張を開放するお話、『ヨガと足法』という題での、ヨガインストラクター橋谷田和子氏の実践講座。
 ヨガをはじめたきっかけの「根っこから元気になりたい」という気持ちのお話しからはじまり、はじめたことで得られた心身の安定、そして人間関係にまで話が及びました。

 実習「子どもの時代にもどる」では、「ライオンのポーズ」を指導して下さりその効果は、肉体の老化防止や人とお話する時の顔の表情が豊かになるとのこと。実習「足の裏を踏む」では受講生相互に実際に体験してもらい、優しく声を掛け、そして答えることでより効果がたかまることなどを教えていただきました。「心のリラックスが身体のリラックスにつながり、また身体のリラックスがストレスを和らげる」との言葉で講座をしめられました。

橋谷田 和子氏
実習「足の裏を踏む」を体験する受講生

第4回講座  平成14年10月10日(金) 遊学館

実践講座
「老化を防ぐ」 ~私の生涯教育~
山形県健康科学研究所主任研究員 佐藤 進さん

 この日は歴代の仙人講座の修了生も聴講に訪れ、会場の2階ホールは満席になりました。
 実践講座『老化を防ぐ』と題して長年医療の現場にたずさわってきた山形県健康科学研究所主任研究員の佐藤進氏が先ず壇上に立たれました。

 老化と遺伝の関係、寿命を縮める遺伝子、寿命を長くする遺伝子のこと、環境要因と老化の関係など、普段あまり聴く機会のない専門分野の話をスライド投影をしながら細かに解説してくださいました。貝原益軒の「養生訓」をひも解かれ、健康元気でいるためにバランスのよい食事に、ほどよい運動そして心静かにしてストレスを回避する心がけが必要であると結ばれました。 

佐藤 進氏

基調講演
「私の生き方」
女優 中村 メイコさん

 次の壇上は華やかな雰囲気につつまれました。基調講演、題して『私の生き方』中村メイコさんの登壇です。

 明るくユーモアのある作品を目指した作家であり生き方の基本をつくってくれた父の話にはじまり、2歳8カ月でデビューしたときの父と母の取った毅然とした芸能界との関わり、お互いに普通の少女の時間が持てなかったことで親友のつき合いがはじまったという美空ひばりさんとの話、結婚する前、してからの神津さんとの関係そして、嫁姑の関係等、面白おかしく話されて会場を沸かせました。
   
 いまは、子育が終わったと思ったら「親育て」「夫育て」がはじまったが、その心構えは、お互い様と思う心、エチケット、優しさを忘れず、堪忍を持つことであると言います。
 メイコさんの人柄なのでしょう、会場が優しく人を思いやる感性で包まれているようでした。

中村メイコ氏


第5回講座  平成14年10月29日(火) 県介護学習センター

基調講演
「高齢期をおしゃれに生きる」
山形県立保健医療大学教授 市川 禮子さん

 この日の講座は場所を県介護学習センターに移して行われました。
 基調講演は山形県立保健医療大学教授の市川禮子氏、題して『高齢期をおしゃれに生きる』。わが国の人口の偏りのことや、高齢者を取り巻く社会環境のことを調査されたグラフや表を示されて、その意味することの解説からはじまりました。
 そして日常の暮らしをおしゃれでいきいきとしたものにするために、食事のこと、便利さが体を弱らせること、楽しい会話、笑いの必要性、心と体のおしゃれをしましょうなど項目を設けて話を進められましたが、その中で「全身が映る鏡が家にあったらいいな」と言う提案に関心が寄せられていました。(詳細参照)

市川 禮子氏

実践講座
「快互」
山形県介護学習センター指導員 相澤 愛子さん

 つづいて実践講座にうつり、今回の会場になった山形県介護学習センターの指導員をされている相澤愛子氏の『快互』の話しと介護用具等の体験です。

 「あたり前の生活をするとは」一人で食べれる(快食)、一人で排泄する(快便)、よく寝れる(快眠)ことで、その三要素が実現出来ることで豊かな生活が実現できる。その手助けをしてあげるのが「快互」で、する側もされる側も、笑顔で仲良く会話しながらすることが必要だといいます。その手助けをする心がけ手だてを体験するためにセンター内の福祉用具展示室や実習室を廻りました。

 食事をできるだけ自分でするための道具類や、ベッド回りのものなどよく工夫されたものに感心したり、実際に使って納得したりしていました。
 福祉用具を使って楽する介護に曰く「介護を快互に」と結ばれました。

相澤 愛子氏

R   e   p   o   r   t

「おしゃれに生きる」
市川 禮子 氏(山形県立保健医療大学看護学科 教授)

 これは、仙人大学講座での講演の一部を事務局文責で纏めたものです。 高齢者を取り巻く社会状況をお話されたあと、高齢者がおしゃれに生きるため、「7の顔を持つ仙人にちなみ、次の7点を提唱されました。

1、食事は腹8分目に30品目を食べる
食事は脂肪・糖質(カロリー)を減らし、たんぱく質・カルシュウム・ビタミン・ミネラルを十分採る。それには、魚・肉・卵・豆類・乳製品・小魚・野菜・果物・海草等を、一日30品目を意識して採る。また、歯ごたえのあるものを良く噛んで食べ、水分を5杯(1杯200cc)くらい食事とは別に採る。

2、きれいな空気を十分に扱う
きれいな空気は命の源。タバコは寿命を六年縮める「老いの薬」。浦島太郎の玉手箱の煙は「タバコの煙」と、がんの疫学で世界的に有名な平山雄先生が言っている。

3、体をまめに動かし、背筋を伸ばす
体を動かすことは、血行を良くし筋力と柔軟性を保ち、転倒、寝たきり予防になる。

4、体内時計に合ったリズムで一日を暮らす
人間には、一日24時間周期の昼行性の体内時計があり、活動と休息のリズムをとって免疫力を高め体の修復が行われている。眠れないときでも心配せず、早寝早起きで朝日を浴びること。

5、楽しい会話をしてにっこり笑う
あんなに手をかけた孫や子供が寄り付かぬと嘆かず、子供らに忘れられていることも子孝行と考えること。高齢者の家計支出に占める交際費が非常に高い。上手な義理絶ちで、今の時間と財産を自分の豊かさに使うこと。それには対等に話し、笑いあえる同年代の友達を作ること。

6、心と体のおしゃれをする
年だからと言わずに、ちょっと気取った装いなど、面倒がらずおしゃれをすること。家の中に大きな鏡を置きいつも自分を見ること。また、人の話を聞き音楽を聴き本や新聞を読み、手紙や日記を書き心の充実、心のおしゃれをすること。

7、今日の一日、心を込めて何かをする
今日一日きちんと生きたという充実感が大事。少し努力して自分のため、誰かのためになることをする。また、明るく長生きすることは、周りを明るくし、子供には「長生き家系」と希望を与えるものになる。

第7回講座  平成14年11月27日(水) 遊学館

基調講演
「高齢者の健康と体力づくり」 
大貫 義人さん

 基調講演は現在山形県のスポーツ振興やスポーツ医療に大きな貢献をされている大貫義人氏の「高齢者の体力と健康づくり」です。

 平成3年に山形市内の高齢者を対象とした健康運動若返り教室を行った時のメディカルチェック、開始時と終了時の医療的測定結果(身長、体重、血圧、尿タンパク、総コレステロール、その他)から運動がよい効果があることを医学的検査結果を基に話して下さいました。それに関連づけて、握力とぼけが関係しているのではないかとテニス系の運動(ラケットをしっかりグリップする運動)、ねんりんピックの正式競技にもなったバウンドテニスがいいですよと、その広報活動もありました。

 現在の若者の食生活を見ると平均寿命を下げてしまう心配があるとし、若い頃の栄養状態が高齢になっても大きな影響があることを指摘する。また40代過ぎてスポーツを続けるかどうかが介護老人になるかどうかを決める目安にもなるとも。そして「健康日本21」の身体活動・運動の項にある一日の歩数の数値目標を示し、123運動(1、一駅は歩こう 2、2キロメートルは歩こう 3、三階は登ろう)を勧められました。

実践講座
「本物の魅力~よい食品の四条件四原則~」
「さらど」事業組合員 横尾 昭男さん

 実践講座は、東根市で無添加で漬物を作る横尾昭男氏(ごまかしのない食品作りを目指す「さらど」事業組合員)の「本物の魅力~よい食品の四条件四原則~」です。まずは地元のテレビで紹介された時のビデオ映写で仕事の内容や基本的な姿勢がよく理解できました。つぎは実践講座らしく実際に2種類たくあん漬けが出されて味を比べて添加物のあるものと無いものの違いの確認です。色の違いも注目でした。醤油などの身近な添加物のある食品の実態と無添加物のものを作っていく難しさを話されました。そして、よい食品の四条件は1、安全で安心なこと 2、ごまかさない 3、味の良い(本来の味) 4、品質に応じた買い安い価格であり、四原則は1、原料の厳選 2、加工段階の純正(手を抜くな) 3、一徹で時代環境にまげられることのない企業姿勢 4、消費者との関係(自分も消費者である)を重視していくことであると力説されました。

 商品開発時の失敗談などで教室をわかせ、おみ漬、梅漬けも出されて楽しく味わい深い講座になりました。

第8回講座  平成14年12月18日(水) 遊学館

基調講演
「活力ある長寿社会」 
堀田 力さん

 堀田力氏の基調講演「活力ある長寿社会」は人間の平均寿命の変化からはじまりました。そして、動物はどうして生きているのかと話がすすみ、鮭の遡上のこと、カマキリの雄が受精中に雌に食べられてしまうこと、ライオンのハーレムのことなど自然界では強い子孫を作るためであるといいます。作れなくなった時がその寿命であると。

 ここ百年ぐらいのうちに人間の平均寿命が飛躍的に延びて、子育てが終わってからの人生は何のためにあるのかと問いかけます。そして「答えは自分のための命である」と明快です。長寿社会になった今、世界的に、お互いの命を尊重し合い助け合っていくという個人主義の考え方をするようになってきているなかで、自分の命を大切にして明るく元気に生きることが義務であるといいます。

 自分が輝いて生きるために、世間の目を気にせず、自分の財産を子供に残すことなどと考えず、自分の行きたい所に行き、したいことをする。そして何よりも自分の命を大切することが重要であると説きます。その上で、人の役に立って、認められ喜んでもらえ、人生の幸せは最後の時に生きてきて良かったと思えることが重要であり、本当の財産は自分がつくり出した笑顔であると結ばれました。

実践講座
「旅のすすめ」
旅行代理店ジェイティービー 山本 利定さん

 つづいての実践講座は旅行代理店ジェイティービーの山本利定氏で、生き生き元気に行動する指針にと「旅のすすめ」です。 
 旅好きになった生い立ちから、旅好きがこうじて旅行代理店に入社し、添乗員をしている時の苦労や楽しみの話からはじまりました。

 「人生8掛け」70歳の方は56歳なんだと考え、これからも生き甲斐を求めてやっていただけたらと、その中で旅行に積極的に出てはと旅の具体的な話になりました。旅の形態が最近になって変化多様化して、自分にあった旅が選べるようになってきていること。質を求める人向き、ゆっくりと家族で過ごす人のためのもの、体験レクレーションをと参加型の旅を希望する人向きなど多方面にわたるツアーを選べるとのことです。
 実際の旅での楽しいみ方や失敗しないための心がけなど、旅の現場におられる人ならではの楽しい話やアドバイスを聞くことが出来ました。

第9回講座  平成15年1月15日(水) 遊学館

基調講演
「栄養のおはなし」 
吉田 匡さん

 基調講演は山大医学部で生化学の教鞭を執られている吉田匡氏の「栄養のおはなし」です。
 栄養学は生化学の一部として位置づけられていて、生化学は人間が健康で長生きするためにはどういったものを食べ、どう運動をしていったらいいのかを化学的に解明していく学問、医学の中でも基礎的な研究をする分野なのだそうです。 
ある種の病気になりやすいという要因には、遺伝子が重要な役割を果たしているが、それよりもっと生活習慣が大きく影響しているとのことです。中でも問題になるのが体重で、多めの人が軽くすれば改善が見られると、ご自身の体験からも言えるそうです。

 定期的に持続的に、早足で歩く程度の運動をすることで、筋肉と骨を強くすることに役立ち年を取ってからの骨粗鬆症を止める効果も得られるのでおすすめだそうです。 つぎに何をどんなふうに食べればいいかということに話が進み、糖質、タンパク質、脂質の摂取割合を厚生労働省の指導する値としてそれぞれ60%15%25%と示されました。この割合は、日本人が毎日食べている食事内容と同じで、世界的にも理想的な食事なのだそうです。ただ食事は朝と昼に重点を置き夜は軽くとるのが良く、もし夜に沢山食べたなら2、3時間は起きていた方がよいとか。

 更に掘り下げて、三大栄養素・五大栄養素の専門的な話も細かに解説して下さり、充実した時間になりました。

実践講座
「山形の食文化とスローフード」
食文化料理研究家 古田 久子さん

 次の実践講座は、当講座ではもうおなじみの食文化料理研究家の古田久子氏の「山形の食文化とスローフード」です。 
 時代の流れに敏感に反応してきた食環境の変化、その影響を如実に受けてきた食文化のひずみ、日本が世界一の生ゴミ生産国なったのはなどの問題提示から、今われわれが地元の食材に目を向け再認識することの必要性を訴えました。 

 村山の人にはおなじみの郷土料理ダシを引き合いに出して、地元の食材をそこで食べることが健康に生きることになり、先人の素晴らしい知恵がそこにあるといいます。また「食育」の重要性も呼びかけています。そして、その流れがスローフードという考え方につながっていき、生産者も消費者も良いものを後世に残す努力をすることで、心豊かなひととき、健康的な食卓での団らんをもてるようになるといいます。また現在、氏が取り組んでいる紅花料理の話で、伝統のものと新しいものが二律共存することで足腰の強い県の料理になっていくだろうと締められました。

第10回講座  平成15年2月13日(水) 遊学館

基調講演
「君の人生は輝いているか」 
脚本家 ジェームス 三木さん

 ジェームス三木の名前の由来や歌手時代の話、脚本家になってからの名前や台本の間違いにまつわるエピソードが会場に笑いを誘います。台本を書くようになって、言葉を使って伝えることの難しさを知ったといいます。書いて出した台本で出来上がったドラマを見てイメージしていたものの3割も伝わっていないことに愕然としたことから学んだことは、「書きすぎ、伝え過ぎると間違いが多くなる」、「沢山書くと焦点がぼける」、だから「簡潔に伝えた方が良い」、「自分の言葉が相手にどう伝わっているか相手の側に廻って考えてみる」ことだそうです。 また「八代将軍吉宗」「独眼竜政宗」などの歴史物を書いていて、知識はいつでも、年をとってからでも間に合うが、知恵は直ぐには間に合わないと確信したことで知恵の重要性に気付かされたといいます。そしていまこそ知恵のある人物が求められている時代でもあると、現代社会の知識偏重に疑問を投げかけました。

 話は年賀状で次のようなアンケートをとったということで、「アグラを正座として認めるか」、「新聞の総フリガナを復活することにご賛同していただけるか」、「高額立食パーティーをボイコットすることにご賛同いただける方」など意見の表明を求めたり、社会風刺的意味合いも含めた話、提言に会場は盛り上がりました。

 子供をドラマの主人公のように解決能力を持つ魅力的な人間にするための教育として、トラブルを解決する力を教えることが重要だと。そして持つべき「人生」は個人の文化を積み重ねることから出来ていくものだといいます。最後に「いい生活を与える親よりも、いい人生を与える親であってほしい」また「いい人生を与える先輩であり、指導者であってほしい」と締めくくられました。

修了式

 続いては「仙人講座」締めくくりの「修了式」が挙行されました。はじめに國井一彦学長の祝辞があり、修了生123名の名前が呼ばれました。代表して修了証書を受けた佐藤正七氏は「十回の講座で学んだことを、この人生にいかに活かしていくか。これが大事なことだと思います」と答えられました。山形県健康福祉部長・本間正巳氏(代読 県健康福祉部長寿社会課長・大場一昭氏)、山形県老人クラブ連合会会長・菅沼喜一氏からの祝辞をいただき、祝電の披露もあり閉会となりました。