仙人講座/第18期 (平成20年度)
■第1回講座 平成20年6月25日 遊学館
基調講演
「能の楽しみ方」
河村能舞台主宰 河村 純子さん
「能の楽しみ方」と題し基調講演を行った河村純子氏は福岡市出身で、故・河村信重氏と結婚後、河村能舞台の運営に携わられ、能を見たことがない人や若い世代のための「能楽面白講座」や「女性のための能を知る会」などを開講していらっしゃいます。
『能』の感じ方はそれぞれのようです。フランスのある文化人は「刑務所に入った方がいい」とか、昭和35年にジャン・ルイ・バロー(俳優)は「死ぬほど感激した」とか、即ち見方の視点において全く異なるイメージです。現代的な感覚で言えばファーストフードとスルメのようなスローフードの違いでしょうか。しかし、これまで見てくれる人々がいたから古典芸能として続いている、600年同じ台本(謡)が使われているのです。
観阿弥(かんあみ)とその子で世阿弥(ぜあみ)から『能』が始まったとされ、観世流と言われるのはそのためです。二人は『能』を発展させるために、時の権力者(足利・豊臣・徳川など)へアピールを図り『能』を確立していきます。
もしかしたら、能の「謡」は当時(室町や江戸時代)の共通語になっていたのかもしれません。というのも、現代はマスメディアが発展して標準語がありますが、当時は各地区の訛りがありお互いの意思疎通にお国言葉では分からないことも多いはずでした。謡は全国的に共通の基本調子があり、「謡」調の言葉使いが、共通語の役割になっていたかもしれないと思っています。
『能』の見方には、だいたいの筋を捉えておく、ルールを知っておくなど、少しコツがあります。『能』を楽しんでもらうためのワークショップでは、『能』はおもしろい・楽しいから入るようにしています。教える方も教わる方もお互いにいろいろの感動をもらったり、与えられたりしますが、最後は、参加者が正座して「ありがとうございました」とお礼の挨拶が自然に出てくるようになります。教える方も感動ですね。終始流暢な京都弁で話され、講演最後に謡の『高砂』を披露、会場の参加者も一緒に謡って終わりました。
|実践講座
「地元でオペラを楽しもう」
山形大学地域教育文化学部教授 藤野 祐一氏
【講座の映像はこちら】
「地元でオペラを楽しもう!」と題し実践講座を行った藤野祐一氏は山形生まれで、東京芸術大学、東京芸術大学大学院を卒業後、高校や大学の講師を歴任され、現在は山形大学教授の傍ら山形声楽研究会会長を務められながら、広くオペラを普及する活動に携わっていらっしゃいます。冒頭、県内外でオペラを観たことがありますか?との問いに、会場では観ている方が意外と多数いらっしゃることがわかりました。オペラは総合舞台芸術の位置付けで身近に楽しめるもの。オペラと演劇の違う所はオーケストラの音楽が入るところなのですが、オペラを構成する要素にはどのようなものがあるでしょうか。キャスト(役者)、オーケストラ、合唱団、舞台装置(大・小道具等)、照明、衣装・メイク、バレエ団が主な要素になり、約100人の構成員です。通常では2000万円程度の費用がかかります。とても大事なことですが、オーケストラはオペラの特徴でもあり切り離すことができません。山形でオペラが続けられるのは、山形交響楽団がオーケストラとして存在し指揮者の村川氏、飯森氏の協力があったからこそで、私たちは地元でオペラを楽しむことができるのです。また、『山形大学YCM OPERA』の存在も大きいです。通常は2000万円程度の費用ですが大学生達の積極的な協力により、費用を押さえてオペラを実演しています。
オペラでどんな連想をされるかというと、生で歌ったりオケ(オーケストラ)ピットがあったりということになるのでしょう。ミュージカルではマイクが基本的に使われますが、オペラは生で歌うことになるので、連続講演ではキャストが変更します。それは喉の回復が2~3日かかるからです。また、オペラの練習期間は、学生の場合8ヶ月、プロでも3ヶ月程度を要します。
途中、オペラ実演では、「千の風になって」を迫力十分な声で歌われ、会場一同感動しました。最後に「地元でオペラを楽しむために、山形のオペラは出前講演にも力を入れています。是非呼んでください。地元でオペラを楽しみましょう!」と講座を締めくくられました。
■第2回講座 平成20年7月24日(木) 遊学館
基調講演
「人間の関係」
作家 五木 寛之氏
戦後50年はいわば『躁(そう)』の状態で経済大国「日本」はつくられました。しかし、2001.9.11以降、世界全体が『うつ』の状態になっているのではないでしょうか。日本では、平成20年の朝日新聞1面のトップ記事に、自殺者が10年連続30000人を超えるということが載りました。戦後50年、バブル20年の混迷期、2001年からゆっくりと『うつ』の状態へ転換して、この先50年は続くだろうと思います。そうするとこれからは、『うつ』の時代をどのように生きるかが大切になります。
うつは心の病ですが、病気と捉えず人間達の叫び声として聞くことが大事だと思います。仏像には悲しい表情がありますが、その表情を観て、ある住職が「衆生病むが故に我病む」と言われました。俗に「世間病むが故に我病む」で、仏は衆生をもれなく救うということです。安らかな涅槃(ねはん)にあっても耳を済ませば悲痛な人間達の叫び声が聞こえ、仏の心も穏やかなはずはないのです。仏教で悲の心といいます。
仏教では、慈悲の教えがあります。「慈」は希望や喜びを与え、前向きの伸び伸びした姿=プラス思考=励ましです。「悲」は‘あ~ぁ’というため息でどこか本能的に暗く湿って後ろ向き=マイナス思考=なぐさめです。頑張ってもどうにもならない時があります。その時に励ましの言葉は非常につらいものです。だまって側に一緒にいてだまって見つめることもなぐさめで、このなぐさめが人の心に染みていくときがあります。この「慈」「悲」の感情は大事で、特に現在にはこの「悲」が必要です。こんな時代に「慈」「悲」を取り戻すことが必要なのです。
強い心・弱い心が折れたのではなく、硬い心が折れて自殺に向ったのです。屈することを知らなかったから、なえることを知らなかったからなのです。明るさ・笑い・笑顔・ユーモアなどのプラス思考が良くて、涙・悲しみ・嘆きなどのマイナス思考が良くないと言われていますが、どちらも大切であります。
全てのものが『躁(そう)』から『うつ』へ転換して攻めから守りへ移っていますが、人の道は不滅ですから、歩くスタイルが異なってくることになります。新しい生き方です。‘あ~ぁ’というため息を付きながら生きることが大切です。
実践講座
「『最上川の文化的景観』世界遺産をめざして」
山形県教育庁文化遺産課長 阿部 和久氏
山形県には、豊かで美しい自然とともに、悠久の時の流れの中で培われてきた数多くの貴重な文化資産が残されています。こうした山形ならではの資産の価値を見つめなおし、人類共通の宝として未来に引き継いでいくことを目的に、「最上川の文化的景観」の世界遺産登録を目指した取組みが進められてきました。
最上川の文化的景観を大きく3つに区分けしてみます。1つは舟運に関係するものであり、1つは農業に関係するものであり、1つは祈りに関係するものです。
最上川は、日本三大急流(熊本/球磨川、山梨・静岡/富士川)の一つで、長さでは7番目ですが一つの県を流れる川ではもっとも長い山形県の「母なる川」です。山形県全体の約75%の流域面積をもつことになりますので、最上川を利用すると便利であることは間違いのないことですから、最上川の河口である酒田から源流にあたる米沢まで舟を通したかったのでしょう。五百川峡谷では人工的とみられる川底岩を削った舟路が10kmにわたり観ることができます。人間と自然の共同作業です。紅花・米・青苧(あおそ)などを舟運しています。明治時代の米沢は東北で3番目の都市でありました。
農業では稲作の品種であります「亀の尾」を庄内平野で発見しています。この「亀の尾」は、現在とても美味しくいただいている品種の「はえぬき」「こしひかり」「ささにしき」などの原種です。もちろん日本の稲作は水稲ですから、最上川を利用した吉田堰・北館大堰・大町溝などの堰の造築も見られます。日本で最大規模の防砂林も現存しています。
出羽三山には、千葉県八千代市はじめ遠くいたる所より修行に訪れていたことが判明していて現在も続いています。
このように出羽三山・鳥海山・葉山などの山々が川を守り、川は農業を守り、最上川の舟運は栄え、たくさんの人・モノ・文化が運ばれました。現在は陸上交通が発達して、川交通は手段でなくなりましたが。最上川には人々の営みとともに河川景観がその歴史として残り、最上川を世界遺産のリストに登録することは人類の河川の多面的利用を後世に伝えることであり、現代において意味のあることです。
■第3回講座 平成20年8月21日(木) 遊学館
基調講演
「幸せの条件」
薬師寺僧侶 大谷 徹奘氏
「幸せの条件」と題し基調講演を行った大谷徹奘氏は東京都出身で、故・高田好胤薬師寺住職に師事、薬師寺の僧侶となられました。「心を耕そう」をスローガンに全国各地を法話行脚中です。
日本は、しばらくは良くならないと感じています。それは礼儀の国と言われた日本が、挨拶が下手になっているからです。人と人の挨拶ができなければ人の幸せを得られません。挨拶の文化で目の高さが違う挨拶は世界中どこにもありません。同じ時間・同じ場所・同じ目の高さで挨拶しましょう。心のこもった挨拶は、体を曲げた所で1度止めること、会えて良かった「こんにちは」、大きな声、この2つが大切です。『挨拶は出会いを喜び、自分から、大きな声できれいな姿勢で』これが挨拶のルールです。
人と人が出会うことを「縁」といい、本日ここに立っていることも「ご縁」があることですが、皆さんが良い話と思えば良縁ですし、そんな話しかと批判的であれば悪縁になります。良い悪いを超えて「縁(出会い)」をつかむことができるかどうか。偶然でもなく、たまたまでもない目の見えないご縁があったからこそ出会っている『よっぽどの縁』なのです。二人向き合い真正面から向き、相手の目を見て、微笑んで「よっぽどの縁ですね」と言ってみてください。何気ない「縁」は何気なく消えます。縁に対して熱を加え心を載せると「縁」は生ものですから変化しだします。「縁」は「絆」に変化していきます。
心静かに話しを聞いて、自分に当てはめること『静思(じょうし)』です。損得、好き嫌いを脇において、人生の中で大切なことです。今だけのことを考えて身勝手な生き方をしたら、人間は本当にだめになってしまいます。我が師-高田住職と仏さんから私が頂いた言葉です、「偏らない心、こだわらない心、とらわれない心、広くもっと広く、これが般若心経。空の心なり。自分勝手な理由と理屈、まだまだ小さな枠の中、静思、静思、静思。」
幸せの種をたくさん蒔きました。自由に拾っていただいて結構ですが、自分で育てるしかないのです。
「本日最後の挨拶です、『ありがとうございました。』」と会場全体で挨拶をされ締めくくられました。
実践講座
「もてなしの心」
観光カリスマ工藤事務所代表 工藤 順一氏
【講座の映像はこちら】
「もてなしの心」と題し実践講座を行った工藤順一氏は山形市生まれで、内閣府・国土交通省・農林水産省の観光カリスマ百選選定委員会で観光カリスマに認定され、観光農業のカリスマ、観光農業の総合プロデューサーとしてご活躍中です。2008年から村山市クアハウス碁点の支配人も務めておられます。
昭和59年から官民一体の町づくりとか観光振興に携わり、全国を回り観光事業の立て直しをプロデュースしてきました。「聞き上手、聞き流し上手、尻合わせ上手」の行政も多く、担当者の意識改革が重要と感じました。
地理的な位置がわかってこそ観光拠点の位置付けができます。寒河江で言えば、寒河江は山形にある、山形は東北にある、即ち、寒河江までの導線をきちんと全国の人に知ってもらわなければお客さんを呼べないのです。村山市のクアハウス碁点も同じでした。
村山市のクアハウス碁点では、意識改革・行動改革が必要でした。従業員も支配人も同じ目線で行動しようと『元氣よく明るくさわやかな笑顔で、お出迎えお見送りと挨拶には、一言ことばを添えて』というおもてなしの心を持っていただくように実践しています。「いらっしゃいませ」「こんにちは」のようなただの挨拶でなく、一言添えて会話にします。お客さんの目線とどのくらい合わせられるかが大切で、発想の転換・意識改革・おもてなしをきちんとして、現在は相当の部分で再生を実現しています。建物とか施設をリニュアールすれば暫くは客も入るでしょうが、長続きはしないと思います。働いている人の意識が変わらなければダメなのです。「おもてなしの心」はまず自分が変わることから始めたのです。
お客さんを呼ぶには元氣、笑顔です。即ち「おもてなしの心」です。建物とか施設の外見の良さでなくたとえズーズー弁でも、おもてなしは世界共通です。
元氣のあるところには、自然に人が集まります。元氣を持ってきてくれるお客さんも集まってきます。今日は会場のみなさんの笑顔を見ることができ、私自身も元氣になりました。
終始元氣に生粋の山形弁でご講演いただきました。
■第4回講座 平成20年9月26日(金) 遊学館
基調講演
「歳をとっても脳細胞は増える~脳科学が証明する今より3倍元気になる方法~」
医師 姫野 友美さん
「歳をとっても脳細胞は増える」と題し基調講演を行った姫野友美氏は、心療内科医・医学博士で、ひめのともみクリニック院長を務められる一方、話題作を多数執筆され、テレビでもご活躍されています。
心が変わると運命まで変わります。心=脳の状態が変わると、行動が変わり、習慣が変わり、人格が変わり、運命まで変わることが脳科学で証明できるようになりました。
中高年の危機として話題になっているのは、自殺者の数、うつ病が実に多いということです。そのようにならないためにはどうしたら良いのでしょうか。
歳をとったら脳はダメになるのかということですが、大人になっても成長していることが証明されました。脳の中枢にはニューロンのかたまりが100億個以上あり、刺激が増すと情報伝達のシナプスが増えニューロンのネットワークを造っていきます。新生ニューロンの働きはいやな記憶を消去してくれること、情報伝達を増してくれること。そして新生ニューロンが持つ効果には、記憶力・思考力・発想力・適応力を高める作用、嫌な記憶を消す作用、抗うつ作用があります。ニューロンを増やす要因は、恋をすること、脳の栄養因子を増やして海馬の新生ニューロンを増やすことなど考えられ、抗酸化物質で動脈硬化を防ぐことも大切です。もともと脳はハッピーになるように仕組まれていますし、体は病気を治そう痛みをなくそうと良くなるように働いています。
また、柔軟で元気な脳を育てるためには、食事(頭を良くする食べ物)、運動(頭の回転が早くなる)、休養(ストレスをコントロールして脳を鍛える)、睡眠(眠っている間に脳は若返る)、生きがい(脳が感動すると機能はアップ)などがあり、これらがうまく噛み合って幸せのループができます。
最後に、「ただし、脳細胞を増やすには焦らず、慌てず、あきらめず。」と、付け加えられました。
|実践講座
「納得!メタボリックシンドローム」
村山保健所長 山口 一郎氏
【講座の映像はこちら】
「納得!メタボリックシンドローム」と題し実践講座を行った山口一郎氏は、愛知県生まれで、現在、村山保健所長を務められています。人の健康を脅かすいろいろな病は、20世紀前半までは結核、その前はマラリヤや肺炎、いわゆるウィルスや病原体が認められる感染症でした。近年はがん・心臓・脳であり、この三大死亡率で約6割を占め「成人病検診」が始まりました。その後、厚生省により「生活習慣病」と言い換えられ、10年毎に健康プランが施行されてきています。山形県でも、平成18年から医療改革関連法案で『メタボ対策』が盛り込まれました。
そもそも健康を考えると、1つの方向としては病気でないこと、傷害がないことでより完璧な姿を目指し悪い所がないか検診で見つける考えです。もう1つの方向としては、いろいろな環境におかれた方(五体満足でなくとも)が自分の状況判断で健康を求めるという、現実的により良くなるようそれぞれの健康を考える方向です。食事バランスガイドや運動バランスガイド「エクササイズガイド2006」などもありますが、人間の体には適応力があり柔軟ですので、毎日規則正しくきちっきちっとする必要はなく、週単位で考えることで健康増進につながっていきます。しかし月単位ですと簡単には戻らない影響が出て健康にはつながっていきません。
『メタボ』の入り口は腹回りですが、内臓脂肪が『メタボリックシンドローム』の原因ということで、男女差、個人差があります。まずは特定検診である『メタボ検診』で胴回りと血圧検査と血液検査で判定して、健康指導もします。ただ『メタボ検診』の効果は3年経たないと判りづらいので、本人の努力・理解も必要ですし、生活の中に根付かせるようにしないと効果はなく、短期間では無理でしょう。
何かをやろうとしてもストレスになったら続いてもダメです。楽しみながらやらないと意味がありません。運動に関しては仲間を増やしてやることもポイントが高いでしょう。毎日、毎週、毎月と1年に1回はチェックしながら、適度の運動・食事を実行し『メタボ』をなくしていきましょう。がんの予防にもつながっていくことにもなります。
終始、笑顔とやさしい口調で講演されました。
■第5回講座 平成20年10月23日(木) 遊学館
基調講演
「笑いと健康」
真打落語家 瀧川 鯉昇氏
「笑いと健康」と題し基調講演を行った瀧川鯉昇氏は、静岡県生まれで、八代目春風亭小柳枝氏に入門、現春風亭柳昇門下を経て、真打に昇進。「瀧川鯉昇」となられ、ご活躍中です。
笑いは健康のバロメーターと言われています。もしこの会場に笑わない人がいましたら、体のどこかに悪い所があると思いますよ。笑い声や笑顔は私の栄養源で、それ以上の欲は出さないようにしています。欲は出さない方がいいです。ジャンケンはアメリカではグー・パー・チョキの順で、国柄の違いでしょうか、欲の塊で勝つ順になっています。日本ではグー・チョキ・パーで奥ゆかしく負ける順になっていますよ。アメリカと日本が「最初はグー、ジャンケン-ポン」したら無欲で日本が勝ちます(米→パーvs日本→チョキだから)。無欲の勝利です。
女性の笑い声は全体を明るくしてくれます。いろんな職場への進出も多くなってきましたが、落語界にも20人位いて明るくなってきました。警察官にも多くなっています。同じように明るくなって喜んでいますが、男女関係の問題も当然多くなってきます。そんな時、ある男女の警察官がたまたま昼食を一緒にとっていただけなのに、停職(定食)になってしまいました。そば屋だったら免職(麺食)だったでしょうね。また女性は言葉が堪能ですね。落語界では女性は10年位で真打ちになっていますけど、男は人殺しの時効と同じ15年はかかりますね。ただ、鼻持ちならない堪能さを持ちすぎるのは良くありませんな。素直さが大切です。お客様にゆったりと寛いでいただくようにしましょう。
日本の文化を若者に伝えたいです。例えば縁起を担ぐことで「茶柱が立つと良いことが舞い込むなんて」と言っていますが、最近はお茶も紙パックになっていて茶柱なんか立ちようがありません。座布団の向きなんかにも日本の伝統と文化があるのです。縫い目のない部分をお客さんに向けるのが礼儀なのですが、縁が切れないようにというゲンを担いでいるからです。若い人には、昔はこんなふうだったと語り継ぎ、文化と歴史を伝えましょう。
最後にとっておきの落語『時そば』を聴かせていただきました。
実践講座
「つれづれなるままに~ことばの遊び~」
村山エッセイクラブ代表 青柳 忠夫氏
【講座の映像はこちら】
「つれづれなるままに~ことばの遊び~」と題し実践講座を行った青柳忠夫氏は、村山市生まれで、約40年間山形県内の高等学校教師として勤められました。現在は村山エッセイクラブ会長を務められ、新聞にも執筆されています。
女性は長生きするようになりました。この会場でも女性が多いですね。女性のように長生きしようと思ったら女性の生き方をまねることです。外に出て四方山話をしたり、お茶飲みしたり、それがいいのですね。
趣味として旅行も好きですが、言葉についての遊びが大好きです。変な言葉をみると、すぐに「何だ、これは!」と目を光らせるのが私の趣味で一番大きい領域です。
ことば遊びには、次のような種類があります。上から読んでも下から読んでも同じ文になる「回文」。例えば『たけやぶやけた』。「川柳」もおもしろい。例えば『敷き布団 ひっつきすぎと 妻が言う』。そして、あまりにも多いのが「カタカナ語」。 駅表示板に「ペデストリアンデッキ」歩行者の道、最近横文字が多過ぎます。縦に大きく書いて「ソウレインホテル」イタリア語で太陽、電話で確かめました。他にもいろいろの視点からカタカナを眺めると、「ハイマート」はドイツ語。「アンチエイジング」は老化防止、日本語で良いと思う。「コンセンサス」は中国語ではイージェンイーチィ。中国語も興味深いです。音に漢字を当てはめた「可口可楽」コカコーラ、意味をとらえた漢字を当てはめ「電脳」パソコンなど。中国人の発音は聞きづらく変でありますが、日本人も外国では同じ、変に聞かれていると思っていいでしょう。会話が通じて意思疎通ができればいいのです。
海外旅行をする時、訪れる国の言葉を5つ位覚えて練習して使うと、地元の人達と会話になって楽しい旅になります。オランダは英語が通じるし、ギリシャでは「タベルナ」といえば食堂に連れていってもらえます。辞書は新しいほどいいので、よく発行年月日をみて買うようにしてください。
興味と関心を持つ「仙人講座」で、私はさしずめ好奇仙人に当てはまるでしょうが、皆さんは好奇心を持ち、長生きしようとし、健康を保とうとしていることは大正解です。死ぬまで長生きします(笑い)。
軽快な口調で笑いを誘い、楽しいひとときとなりました。
■第6回講座 平成20年11月21日(金) 遊学館
基調講演
「仙人の長寿食~胡豆魚梅参茶(ごまさかうめじんちゃ)~」
食文化史研究家 永山 久夫氏
「仙人の長寿食」と題し基調講演を行った永山久夫氏は、福島県生まれで、古代から明治時代までの各時代の食事復元研究の第一人者で、TVやCMなどの食に関する時代考証、食事再現などでご活躍中です。
江戸時代の書物の中に「おかゆ」を毎日食べて生きていたじいさんが300才だったとのこと。確かに「おかゆ」は炭水化物、多くの水分を含みボケ予防に大切な成分です。人間の体の水分は、赤ちゃんの時は85%、大人では60%、高齢者では50%を切ってきます。50%切ると背が縮んできて腰が曲がって生活しづらくなります。水分は大切なのです。
九州で調査した結果ですが88才以上の男女で、男は40%が妻と一緒に暮らしている=「妻」が必要ということになりますか。女は98%が夫と死別している=「夫」は要らないということでしょうか。また、60才以上の離婚した男女で、男は平均70才まで生き、女は平均89才まで生きたそうです。寿命平均が男は79才で9年の短命になり、女は86才より3年も長生きしたことになります。男は妻から離れたらダメで、女は夫から早めに別れるのが良いという事になります。(笑い)
人間の体は20種類のアミノ酸でできています。この中には9種類の必須アミノ酸があり自分の体ではつくれないので食べ物から採る必要があります。皆さんには『胡豆魚梅参茶』で食べ方名人になって欲しい。ごま(胡麻)には1200mg/100gのカルシウム=健康には600mg/1日が必要=が含まれています。大豆には1480mg/100gのレシチン=脳の記憶物質=が含まれています。魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)が含まれています。梅干にはクエン酸=疲れをとり、だ液の抗酸化成分=が含まれます。お茶(70℃以上)にはカテキン=脳細胞の抗酸化=が含まれます。
また、免疫細胞であるナチュラルキラー細胞は母体からもらってきたものですが、腹を抱えて笑うと増えることもわかっています。最後にみんなで笑って一緒にナチュラルキラー細胞を増やしましょう。「あっはっはっは…」
笑いを絶やさず、コミカルに長寿食について語っていただきました。
実践講座
「FOODは風土~大人の食育~」
はなみずきの会代表 鈴木 順子氏
【講座の映像はこちら】
「FOODは風土~大人の食育~」と題し実践講座を行った鈴木淳子氏は、青森県生まれで、食育デザイナー資格を県内最初に取得されました。「はなみずきの会」を結成し、地産地消消費者団体など多くの団体でご活躍中です。
『食育デザイナー』とは、「地域の食育を推進し、日本型食生活の素晴らしさを見直し地産地消を通じて豊かな人間環境を進める人」。簡単には現場で食育をする人のことです。
日本人は数千年以上米を食べてきた民族、Foodは風土。原点に帰って考えると、本当に大切なのは食歴だと思います。
山形は食の宝庫、伝統野菜があります。あかねほうれん草、蔵王かぼちゃ、里芋、もってのほか、おかひじきなどあります。地産地消も地産外消も必要です。生産者と消費者は背中合わせでなく、食べ支えてあげるのが大事です。ご飯をもう一膳ずつ全国民のみなさんに食べてもらうと農家は助かります。ところで、種の自給率は15%しかありません。山形の青菜の種はチリ産、きゅうりの種も中国産等になっています。雨が多くてきちんとした種ができないのだそうですが、ここからも在来種を食べ支える必要があるかと思います。何より安心・安全です。
食事バランス、野菜は足りていますか?1日350g必要です。生・焼く・炒める・ゆでる、の順で酵素が少なくなりますので、少しでも生野菜を食べると体に良いです。また、350gの内120gは緑黄野菜、230gは淡色野菜がいい。さらに百歳の人で菜食主義者はおりません。米沢牛などのたんぱく質も取りながらきちんとしたバランスで食べているようです。
ただ、やはり主食。日本の主食はお米が一番。アミラーゼ活性が高く、野菜と肉とバランスを取っての日本型食生活は素晴らしく、体力の源となり頑張りの強さと気力の強さを出します。今一度、米を中心とした世界に誇れる日本型食生活を見直していただきたい。食育活動は幅広くて、どんな小さなことでもきっと誰かの役に立ちます、食育の種を蒔いていきましょう。
途中、自給率アップを目指しての太巻きずしの実演と体験を行ったほか、最後には野菜のサプライズプレゼントもあり…食育にかける熱い思いを受け取ったひとときでした。
■第7回講座 平成20年12月11日(木) 遊学館
基調講演
「老後は人生の総決算」
コメンテーター 金 美麗氏
「老後は人生の総決算」と題し基調講演を行った金美齢氏は、台湾生まれで、現在ではテレビや雑誌、新聞など各種メディアにおいて、家族、子育て、教育、社会、政治など幅広い分野にわたって様々な提言を行うなど、ご活躍中です。
私が言いたいことは、老後は人生の総決算、孤独な老後か自由な老後か、それは自分しだいということ。何でも他人のせいにする人に幸せな老後はありません。全てが自己責任であるはずです。
私のモットーは、遊んで学んで働くこと。実体験をすることで、ヴァーチャルでは得られない感動を得ることができます。実体験を一日一日積み重ねることが、美しく年を取る秘訣なのです。日本で高齢者がしょぼくれていたら日本の前途は真っ暗です。少子高齢化社会において、「少子」は将来のことなので改善の余地がありますが、「高齢化」は変えられないし、避けられないこと。世界一長寿国になった日本は、衛生状況が良く、空気・食べ物に恵まれ、安全で、豊かで、医療制度のレベルも高く、国民皆保険という素晴らしい条件がそろっているからなのです。
私の基本は、お世話になった皆のために良かれと思うことを奉公すること。生涯現役、自分で何ができるかです。社会に貢献して社会とかかわりをもつことが幸せなのです。ハッピーでチャーミングな年寄りには、あなたに会いたいとか、お話がしたいとか、若者が放っておかないでしょう。保証します。金銭的なものでなくとも発想とか今までの生きてきた知識・経験を若者に伝えることが必要で、年寄りにできることは沢山あって、自分ができる範囲で自分の力を真剣に発揮できるよう、せめて子供達の通学路を見守りするとか、社会への貢献に関わり合いを持ちましょう。できれば景気の元になるよう、余裕があったら少しお金を使って、地元の景気のためにも少しは何かしましょう。
最後に、エールを込めて「皆さんが元気で楽しく健康で、山形という地域を大切にして素晴らしいものをどんどん積極的に、日本全国に発信しましょう。願っています。」と締めくくられました。