仙人講座/第5期 (平成7年度)
仙人5期生を目指し…
七つの顔に挑戦!
■公開総合講座 平成7年6月21日「遊学館ホール」
開校式を兼ねた公開総合講座には、OBを含む350人が出席。ノンフィクション作家の沖藤典子さんが「子に頼らない老いを求めて」、また映画評論家でおなじみの水野晴郎さんが「人生のめぐり逢い」と題してそれぞれ講演。受講生は自らの人生を重ね合わせながら、ゆとりのライフサイクルを探っていました。
先に演壇に立った沖藤典子さんは、自身の家族体験や周辺のできごとを素材に老いの問題をとりあげ、『誰にも迷惑をかけないのが理想だが、むしろ完璧を追求せず70点の人生で十分。楽しい人間関係を続けることが大事』で、そのためには『いつも好奇心を持って世の中の動きをキャッチして欲しい』と結びました。(写真右:豊かな老いを説いた沖藤典子さん)
続いて登壇した水野晴郎さんは、映画やその裏話、世界の旅の体験を交えながら、『人生で大切なのは何かをやろうとする意志の力』で、『若さを保つ秘訣は、誰もが経験した青春時代のひたむきな情熱を思いおこすこと』『どうか青春の記憶を心の糧にして素晴らしい明日に向かって、素晴らしい人生を歩んで欲しい』とエールを送りました。
豊かな老いを説いた
沖藤典子さん
映画の持つ魅力を語る
水野晴郎さん
■第1回講座「交遊仙人」 平成7年7月25日 遊学館
第1回のテーマは「交遊」。元NHKのど自慢司会者の金子辰雄さんが「NHKのど自慢17年・ふれあい旅日記」と題して基調講演。のど自慢の舞台裏からみた楽しいエピソードを紹介しました。続く実践講座では、山形大学教養部助教授山口常夫さんが「えいご『楽』習実践躬(きゅう)行の奨(すすめ)」と題して、英語を楽しく身につける極意を伝授しました。
基調講演
金子さんは、『私の好きな言葉は吉川英治氏の「われわれ以外、みなわが師」。全国各地で人の情けを受けてきて今日がある』とこれまでの人生を振り返り、『大事なことは相手の身になって話しかけること』『ふれあいの心を持っている人に老いは遅れてやってきます』『ふれあいの基礎はまず家庭から話題の花を咲かせましょう』と結びました。
(写真:ふれあいの大事さを説いた金子辰雄さん)
実践講座
続く実践講座では山口さんが『英語が本当に面白いとわかるのは社会人になって、学習から楽習に気づいてから』『カタコトでも外国人の人たちと話せれば人生観が変わる。そのためには、自国の文化や歴史を知ることがまず大事です』ユーモアを交えながら楽しく指導していただきました。
(写真:ユーモアあふれる山口常夫さん)
■第2回講座「自足仙人」 平成7年8月22日 遊学館
第2回講座では、自主自立の術を身につけようと「自足仙人」を目指しました。家事評論家の式田和子さんが「自助、互助、公助」と題して基調講演。男性は自分のことは自分でやること。女性は社会と直結することが自助の始まりと力説されました。
続いて山形大学工学部の高橋幸司助教授に「地球環境保全に私たちができること」と題してお話いただきました。
基調講演
式田さんは『私の実践している暮らしの自助は、生活を崩さない。買い食いをしない。物を増やさないの3つ』。健康では『怒るな、転ぶな、風邪ひくなの3つが基本』また『互助とは助け合うこと。その基本は夫婦の会話』とわかりやすく解説。『公助についても自ら行動しなければ門戸は開かれない』と明解に述べられました。
(写真:心も若々しい式田和子さん)
実践講座
実践講座では高橋さんが、『地球環境で問題となっているのは、温暖化現象、オゾン層の破壊、酸性雨、河川汚染やゴミ公害があげられる。大事なことは無償の愛。自分たちで守れることは積極的にやることが環境を守る一歩。ぜひみなさんにも環境に優しい人間になっていただきたいし、若年層に対する指導を心がけて欲しい』と結びました。
(写真:環境問題は自分の問題と説いた高橋幸司さん)
■第3回講座「発想仙人」平成7年9月20日 遊学館ホール
今回は豊かな発想で、新たな世界を広げようと、漫画家の鈴木義司さんと、情報科学研究所所長で新脳力開発センター代表の渡辺茂夫さんを講師に迎え、「発想仙人」に迫ってみました。
基調講演
鋭い視点で社会を切り、風刺の効いた作風で幅広いファン層を持つ鈴木さんは「好き嫌いせずなんでもチャレンジ」と題して基調講演。『物ごとにはいろんな考え方がある社会は決して常識通りには動かない。例えばワイシャツのボタンがとれたとき、ボタンからワイシャツがとれたということもできる。物ごとは決めてかかるべきではない』また『老化の根本は物の考え方が固定してしまうこと。頭は柔らかくもって欲しい』と述べた後、実際にペンを執り似顔絵のコツを伝授しました。
(写真:軽妙な語り口で説いた鈴木義司さん)
実践講座
続く実践講座では渡辺さんが「心と体の健康と音楽」について講演。『ストレス解消や自立神経失調症に音楽をうまく取り入れてマインド・コントロールすると非常に効果があることが少しずつわかってきた。つまり心身ともにリラックスできる状態にもっていくことが重要で、音楽の果たす役割は大きい。皆さんも歌うだけでなく、ゆったりした音楽をよく聴くことをお勧めします』と音楽の持つ不思議な効用を力説されました。
(写真:音楽の意外な効用を述べた渡辺茂夫さん)
■第4回講座「発想仙人」 平成7年10月12日 山形美術館
第4回講座は何か1つ得意な分野を身につけようと「一芸仙人」がテーマ。画家で芥川賞作家でもある赤瀬川原平さんが「モノの味わい」と題して基調講演し、実践講座では山形大学医学部助教授で救急部副部長の須田昭男さんが「骨粗しょう症の予防と治療」について講演しました。
基調講演
赤瀬川さんは「路上観察で頭から開放される気持ちよさとか、自然に入ってくる心地よさを感じている」と語り「今の人間は頭だけが働き、観念的になっている。部屋の中だけの学問も頭だけの働き。観念の世界に陥りやすい。その点フィールドワークは自然が相手。自然の力はいつも頭の働きを越えたものを見せてくれる」とも。中古カメラの魅力については「一種の骨とう、目利きの世界。お金の力ではなく、自分の眼力で取り出してくるところが自慢であり、誇りでもある」と延べ、最後に「好きなこととか、好きなものは大切に育てたい」と結びました。
(写真:屋外でのフィールドワークを説いた赤瀬川原平さん)
実践講座
須田さんは「年を取るとカルシウムの吸収能力やカルシウムを作る機能が低下しカルシウムが不足しやすい。血中のカルシウム値が低くなると骨からカルシウムが取られ、骨が弱くなる」など骨粗しょう症の原因や症状を分析しながら、予防の基本は運動、日光浴、食事が三本柱」と述べられました。
講演の合間に受講生の皆さんは、山形美術館で開催中の第80回院展山形展も鑑賞しました。
(写真:須田昭男さんはカルシウムについてわかりやすく解説)
■第5回講座「発想仙人」 平成7年11月15日 遊学館
第5回講座は「好奇仙人」をテーマに、好奇心旺盛な生き方に迫りました。基調講演の講師にテレビディレクターの矢追純一さんを迎え、実践講座では近代経営研究所代表取締役の吉川實さんから「超低金利下のマネープラン」を学びました。
基調講演
矢追さんは「生きるよろこび、広がる世界」と題し、人間のからだから出る「気」とか、最近の宇宙観、世界観などに触れ、「私たちは空間から生まれ、空間に戻っていく。その間に私たちの人生があり、生きている間は本当に短い。生まれる前と死んでからの方がずっと長く、それだけに生きている間を大切にしなければならない」と力説したほか、日常生活の考え方や行動について「とかく大人は物事をある方向からしかみない。いろいろな角度から物を見れば、思いもかけない真実が見えてきます。また、先入観とか常識をいったんはずして見ると、思いもかけない力が自分の中にわいてくるもので、皆さんには超能力者並みに何でもできる人になることでしょう」と視点の切り替えや新たな可能性へのトライなどを促しました。
(写真:視点の切り替えを力説した矢追純一さん)
実践講座
吉川さんは超低金利になった要因を分析しながら「今日のような超低金利のときは短期金利、せいぜい1年もので様子を見た方がいい。預貯金は分散するより一カ所か二カ所ぐらいにまとめた方がいい」などと具体的にアドバイスしてくださいました。
(写真:実践的な預貯金の運用を説いた吉川實さん)
■第6回講座「健康仙人」 平成7年12月20日 遊学館
第6回講座は健康術を身につけようと「健康仙人」をテーマに、食文化史研究家の永山久夫さんを基調講演の講師に迎えたほか、実践講座では米沢手話サークル「年輪」会長の後藤幹一さんから指文字や手話の指導を受けました。
基調講演
永山さんはNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」「武田信玄」「春日局」で各主人公の食膳(ぜん)再現を担当したほか、古代から近代までの各時代の食事復元を長く研究しています。この日は「長生き仙人になるための胡豆魚大参茶(ごまさかだいじんちゃ)」と題しゴマと大豆、魚、大根、ニンジン、お茶の成分を紹介しながら、それぞれの重要性を説きました。この中で永山さんは「間もなく15歳以下の子供の数より65歳以上の高齢者が多くなる。私たちは他人の世話になれない世代。自分で自分の健康を管理しなければならない。老化を防ぎ、いつまでも元気でいること。老化を防ぐためには食事が大切です。人間の体は食べ物によってつくられ、食べ物の化身ともいえる。「胡豆魚大参茶」は健康貯金の元金です」などと話してくださいました。
(写真:老化防止の秘訣を伝授する永山久夫さん)
実践講座
後藤さんは「体を使って健康維持」と題し、聴力障害者の生活を紹介したほか、指文字の五十音や、手話で「うさぎ追いしかの山、小ぶな釣りしかの川…」と文部省唱歌の「ふるさと」を指導し、最後に受講者全員が手話で「ふるさと」を”歌い”ました。
(写真:指のトレーニングの効用を説いた後藤幹一さん)
■第7回講座「洒落仙人」&修了式
平成8年1月24日(水) 山形グランドホテル
最終回の第7回目のテーマは「洒落」。落語家の古今亭圓菊師匠が「落語にみる洒落と粋」と題して小話や落語を交えながら講演しました。
圓菊師匠は「五千年前のエジプトのピラミッド内部に、今の若い者はしょうがない、ということばが書いてあるそうです。いつの時代も、若い人たちはそう言われ続けてきました。今、しょうがないと言われた若者たちも、40年もすれば、同じ言葉を次の若者世代に浴びせかけることでしょう。でも、見方を変えれば、それだけ人間ができてきたとも言えます」と述べた上で、人間は成熟を目指しながらも、若い感覚、おしゃれな感覚を失ってはならないことを強調しました。
また、「雷さまは怖いね」「なるほど」といった小話を幾つも披露して会場を爆笑させながら、「こういうのがわからないと、長生きはできません。くだらないと言ってしまわずに、しゃれた話、粋(いき)な話を通して、楽しく生きるセンスを身につけてください」とアドバイス。落語二題を熱演しながら、受講生を笑いの魅力に引き込んでいました。
(写真:笑いの渦に引き込む古今亭圓菊師匠)
みずみずしい感性を備えて…
仙人五期生フレッシュにデビュー!
去年6月の公開講座を皮切りに、「交遊」「自足」「発想」「一芸」「好奇」「健康」「洒落」の7つの顔を備えた仙人の生き方を修行。魅力的なシルバー世代の創造へチャレンジしてきました。最終講座に続いて開かれた修了式では、今期の受講生118人に「仙人ライセンス証書」が授与され、交流パーティーで親交を温めながら、互いに新しい生き方への決意を誓い合っていました。
(写真:代表して仙人ライセンス修了証書を受け取る阿相さんと山口さん)
「仙人講座」修了式
時代の感性をユニークな切り口で学ぶ仙人講座は、年々、人気が高まり、開講以来五年目の今年で延べ580人の修了生を数えることとなりました。郷土の生んだ教育者・児童文学者の故国分一太郎氏は、自著「しなやかさというたからもの」の中で、自然の中で子どもたちを育てることの大切さを説き「筋肉や神経をつよく、しなやかに発達させるためにも、ねじる、ひねる、のばす、折る、まげる、ひっぱる、ちぎる、たたく、投げる、ひろう、もとへもどす、こういうためしをどんどんしなければならぬ」と述べています。
弾力に富んだ柔らかな体と思考、それはだれにとっても大切です。それが「しなやかさ」であり「たからもの」となるのです。幾つになってもみずみずしい感性。それを仙人イメージと重ね合わせながら、受講生は修行を積み重ねてきました。
仙人体操で気分をほぐした後、修了生全員で記念撮影。引き続き修了式が行われ、今期の修了生を代表して男女最年長者の阿相孫八さん、山口キヨさんに松本賢弥副学長から「仙人ライセンス証書」が授与されました。これに対して84歳の阿相さんが謝辞を述べ、県など来賓者からも祝辞がありました。この後、交流パーティーが開かれ、公開講座と合わせて全8回の講座を担当した作家や漫画家、評論家など講師陣の色紙が抽選で修了生にプレゼントされました。会場では免許皆伝の「仙人」たちが、会得したばかりの「七つの術」を使いながら明るく懇談。互いに健康ライフの喜びをかみしめていました。